SPECIAL

マイスター「匠」が創る高画質・高音質ブランド「FORS」(フォルス)

Prologue

レーザーディスク時代より高画質・高音質に定評のあるキュー・テックが、今回改めて高画質・高音質ブランドとして「FORS (フォルス)」を立ち上げるということで、実際にそのクォリティも体感しながらお話を伺いました。

インタビュアー
●麻倉 怜士
1950年生れ。1973年横浜市立大学卒業。
日本経済新聞社を経て、プレジデント社入社。経営戦略、イノベーションを担当、執筆。雑誌『プレジデント』副編集長、雑誌『ノートブックパソコン研究』編集長。1991年に独立。自宅に150インチのシアターを設置しハード、ソフトの研究を行っている。
音楽、映像、デジタルAV機器、ネットワークメディア、パッケージメディアの動向にひじょうに詳しい。ビックカメラの「麻倉怜士セレクト・オーディオ・ショップ」をプロデュース。日本画質学会副会長。津田塾大学では音楽理論、音楽史を教える。
著作は「高音質保証!麻倉式PCオーディオ」(アスキー新書)など多数にのぼる。

Chapter-1  ブランド化の経緯

従来の音に使用していたFORS の概念を広げ、今回FORS を「キュー・テックの高画質・高音質ブランド」にしようと思った経緯を教えてください。

小池:キュー・テックはパイオニアグループ時代を経て30年の歴史があり、レーザーディスクからDVD、Blu-ray Disc(以下BD)と、パッケージとともに歩みながら常に高画質・高音質を追求してきました。アナログからデジタルへの時代の変化に伴い、また、地デジ化以降、テレビの高画質・高音質化など、世の中全体の画質や音質の要求レベルが上がってきたことをふまえて、我々はパッケージメディアを扱う会社として、マスター品質とは何か、高品位とは何かを考えるようになりました。そこで、改めて高画質・高音質を自社の強みとして再認識し、ブランド化を図ることになりました。FORS というのは、もともと、BD制作時の高音質に関わる部分で使用してきたのですが、この度、映像の改善・変換技術も含めて、キュー・テックの高画質・高音質ブランドの総称=FORS とすることにしました。

キュー・テックといえば、すでにレーザーディスク時代からハイクオリティなところを追求しているイメージがありますが、あえて今回ブランド化した背景には、FORS の原点がきちんと定義づけられ、実績を残してきたことから中身を広げていこうという発想になったのだと思います。改めてFORS の概念を教えてください。

小池:FORS は約6年前に「音の品質」に着目したことから始まりました。当時、ビデオ業界では「デジタルであれば音は変わらない」という考えが定説になっていたのですが、あるオーディオメーカーの技術者の方から「マスターテープとパッケージでなぜこんなに音が違うのか」と質問されました。そこで、いろいろと実験してみると、ビデオパッケージの製作作業行程上、多数の映像・音声機器を経由、さらにそれらを結ぶ伝送路を通過することで、オリジナルの波形が少しずつ崩れていくことがわかりました。2年間に渡る試行錯誤の結果、信号補正する回路を作って検証してみたところ、デジタル信号ではあるが、信号を忠実に補正して伝送することによって、位相がはっきりとする・全体的に聞きやすくなるなどの、マスター同様の音質効果を得ることに成功しました。「マスターに記録された原信号を忠実に再現してパッケージまで伝送する」ことを4文字まとめたのがFORS (Faithful Original Signal)の概念です。

新しいFORS の体系とオリジナルFORSについて教えてください。

小池:オリジナルのFORS は、BDのエンコード・オーサリング(以下E/A)時の作業プロセスをFORS 仕様にすることで、ソフト制作者が求めた映像・音声をオリジナルそのままに忠実に、パッケージソフトに記録することを実現してきました。実際にアニメ・映画・音楽ものなど多数のパッケージソフトに採用されてきました。今回、新たにブランド化したFORS の新体系は、パッケージソフト用に高画質・高音質処理を行う総称を「FORS MASTER PROCESS」と呼びます。映像・音声について高品位アップコンバート・高精細処理などを行うプロセスを「FORS EX PICTURE」「FORS EX SOUND」と、映像のエンコード時の高画質処理を「FORS EX PROCESS」と呼びます。また、映画への応用として「FORS CINEMA」があり、「FORS MASTER PROCESS」と「FORS CINEMA」をあわせて、「FORS」をキュー・テックの高画質・高音質ブランドにします。私たちは、この新FORS ブランドのもと、FORS マイスターを核として、パッケージソフト業界最高峰の高画質・高音質に取り組んでまいります。

●小池 俊久
1981年のレーザーディスクの発売以来、多くの評価用ソフトを制作。代表作に「Ordinary Europe」「Gaia’s Daughter」「Hi-Definition Reference Disc」などの制作指揮を担当。現在、Audio Reference Discや4K評価ソフトを制作中。