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ダビングステージで活かされる、FORS CINEMA
~東宝スタジオ訪問インタビュー~

新開発FORS CINEMA PROCESSORを「青天の霹靂」でご採用頂きました、東宝スタジオ多良様、録音の郡様のお二人にご感想を伺うべく、東宝スタジオでFORSマイスターメンバーがインタビューして参りました!
(取材日:2014年7月24日)

東宝スタジオサービス・ポストプロ部
多良政司様

1975年東京映画入社、1978年東宝サウンドスタジオと合併後、東宝製作の磁気4ch作品や、日本初のドルビーステレオ作品「連合艦隊」(1981年)、日本初のドルビーデジタル作品「ゴジラ対メカゴジラ」(1993年)、等多くの映画立体音響制作に参画、以後テレビ、映画、テーマパーク、70mm大型映像の音響制作やテクニカル・アドバイザー、ポストサウンド・スーパーバイザーなど担当


録音技師
郡弘道様

TV「Gメン’75」で助手として参加以降、「ウォーターボーイズ」(2001年)第25回日本アカデミー賞優秀録音賞、「スウィングガールズ」(2004年)第28回日本アカデミー賞最優秀録音賞、「それでもボクはやってない」(2007年)第31回日本アカデミー賞優秀録音賞、「沈まぬ太陽」(2009年)第33回日本アカデミー賞優秀録音賞等、映画、TV他多数の作品の録音に参加。

※「終の信託」(2012年)ではFORS SYSTEMを試験的に採用頂き、「青天の霹靂」(2014年)ではFORS CINEMA PROCESSORを全編に採用頂きました。

Q.それでは、早速ですがFORS CINEMA 導入のきっかけとテスト評価の経緯についてお聞かせください。

多良様(以下、多):最初にキュー・テックさんからお話を頂いたときに、FORS自体がどういうものかわからなかったのですが、説明を聞くと、スピーカーコードやトランスを変えたりすると音が変わるという、アナログの頃のオーディオの感覚にすごく似ていると感じまして、個人的には感覚的にすんなりと入っていく事ができました。音も確かに良くなっていることも実感できましたのでキュー・テックさんからの、実際に映画のサウンドトラックに使えないかというお話を受けて、理屈はともかくやってみようかと思い実際の映画のサウンドトラックでテストを続けました。
その頃、映画音響の世界ではデジタルシネマの時代に移行中で様々な事がおきていたんです。 DCPの音声はWAVの48K/24bitのマスタークオリティで同じはずなのに、検定試写にいくとダビングステージで聞いていた音とは変わってしまう事があり、「なぜ変わるのか?」と当時は様々な原因を模索していた状況でした。
その解決法の一つとしてFORSを通すのはどうだろうかという考えがあったのも正直な所でした。 実際にキュー・テックさんと一緒にいくつかサンプルを元にテストをやってみたところ、DCPでもあきらかにFORSありは音質的に良い方に変わるという認識を持つ事ができました。
その後、二回に分けてそのサンプルを郡さんはじめ弊社スタジオに出入りしていただいているミキサーの方、音楽の担当者の方にも聞いてもらったところ、音楽関係の方達は高評価なんですよ!「原音に近い音質で、弦がまろやかでのびやかな感じになるしリバーブの違いも良くわかる!」などの感想をもらいました。
しかし映画のミキサーさん達は必ずしも100%、FORSが良いという感想ではありませんでした。

Q. FORS CINEMA の評価はミキサーの皆様の中でも様々な意見があったのですね?

多:そうですね。映画の場合は、ダイアログ(セリフ)をメインに扱っており、必ずしもいい条件でない収録環境の音でも使わざるを得なかったり、怒鳴りやウィスパー(ささやき声)もあるので作品全体で見て最適と思われる音質やレベル、バランスなどを決める為にシーンやカット毎に音は均一ではないし少しずつ違っているんです。
そういった状況の中で作品全体の音響的な統一感とメリハリをつける必要があり、時には演出的にイコライジングがきつめに入ったり荒れた音にする必要もあるわけなんです。 きれいばかりじゃ映画としておもしろくなくなると言った映像との複合的な環境下にあるので映画のミキサーさんが100%FORSに行かなかったのは、AUDIO的な音質だけで語っていないというところが大きいと思います。一般の視聴者の皆さんがBlu-rayを家庭で観る場合、その音源を複数の違う環境で比較視聴ということはあまりしないですよね?
映画音響では、素材の段階から、ダビングルーム、試写室、劇場とお届けする音をずっと追いかけてモニターしています。常にABで比較しながら作業を進めて確認しています。自分の録音したAというリファレンス音に対して、トランスファされたBという音は様々な条件下でどう変化したかという比較です。
映画のミキサーさん達は、この様な経験則と再生機材の違いなど考慮した自分なりの映画のリファレンス音への感覚が身に付いているので、AB比較の結果、映画全体の音響的な雰囲気というか映像とのマッチングというところでも、音楽の方のように必ずしもFORSが100%良いという事にはならなかったんだと思います。

Q. 素材のAB比較で最良の音を求める仕事はとてもシビアなのですね。

多:ええ。ただ、その中でFORSを高評価してくれたのが郡さんで、自分の担当作品に使いたいとおしゃってくれていました。
今回の「青天の霹靂」では、最終的にダイアローグ、音楽、効果のトラック全てにFORSを入れましたので、その辺はご本人からお話して頂きましょう(笑)。