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マイスター「匠」が創る高画質・高音質ブランド「FORS」(フォルス)

Chapter-3  FORS EX PROCESS

「FORS EX PROCESS」について教えてください。

中村:FORS EX SOUNDが音声のエンコード時の処理なのに対して、映像のエンコード時のFORS処理がFORS EX PROCESSです。FORSの概念「Faithful Original Signal=マスターに記録された原信号を忠実に再現してパッケージまで伝送する」ポリシーに基づき、ビデオエンコード時からオーサリング作業にいたるすべての行程において、VTRやエンコード・オーサリングマシンなどの電源や接続ケーブルにもこだわりました。視聴を繰り返し選択した高品位ケーブルを使用、データ格納用ハードディスクにももちろんFORSマスタードライブ使用することによって、オリジナルデータを忠実に伝送しています。
これらに措置により、最終作業のパッケージ用にデータMUX(マルチプレックス)する際に問題なく波形をそろえられます。FORS EX PROCESSによって、従来のプロセスに比べて一皮むけたような効果が得られています。例えば黒澤明監督作品「七人の侍」(発売元:東宝様)にご採用いただいた際には、雨のシーンで雨粒がよく見えるなどの効果がありました。その他、中間色がハッキリとし、また色の滑らかさと奥行きを感じる効果もあります。

専用の電源、ケーブル、ハードディスクを使用しているのは、音にこだわっている人から見ると納得できることなのですが、映像のエンコードやオーサリングに使用している点が非常にユニークだと思います。そこに至る経緯をお聞かせください。また具体的にどの様な効果がありますか?

中村:映像の作業環境に専用機材を使用するという考えに至るまでには、試行錯誤の繰り返しでした。その結果、実証試験で音質部分で使用しているメソッドが映像にも効果があることがわかりましたので、同様のシステムを採用することにしました。さらに、データの追求だけではなく、高品位に相応しい設備として何が最適かという観点から、マイスターの感性で選定・検証をしました。
ノイズ感の少ない安定した画・解像度感と奥行き感のある映像が実現されています。

FORS EX PROCESSマイスターとしてのこだわりは?

中村:「原信号を愚直なまでに忠実に最終行程まで持っていく」の一言に尽きます!
例えばオーサリングツールの中ではネットワークを介したり、パソコン上でファイルのコピーを行ったりする作業も発生しますが、そういった作業でも音や画が変わってしまうのではないかと思っています。私はFORS EX PROCESSマイスターとして、そこまで疑問を投げかけ、検証を行いながら、常に拘りでクオリティを追求しています。

●中村 一成
メーカーハードウェアエンジニアから1989年キュー・テックへ。
同年から技術部を経て現在、デジタルメディア制作部に在籍

Chapter-4  FORS CINEMA

FORS CINEMAについて教えてください。

伊藤:映画の世界もフィルムからデジタルに変わり、デジタルシネマが主流の時代になってきましたが、同時に製作側が感じていた音と、実際にシネマサーバーを介して劇場で聴く音が違うのではないかという問題が起きているという話を最近よく聞くようになりました。
それらの問題を追求するべく、3年ほど前から実際の劇場の空間を使用して、我々のFORSの考え方がどのように音場に反映されるかということの実証試験を行ってきました。まず、7.1チャンネルに対応したシネマ専用のFORSプロセッサーを開発、東宝スタジオ様でテスト評価を頂くなど、ダビングステージ工程でも比較・検証をしてきました。その結果、パッケージメディアでの効果と驚くほど似ていることや、サラウンドではより定位がはっきりする、音楽成分のつながりを感じ、台詞も輪郭がハッキリする・リアルさが出るなどのFORS効果を得ることができました。

シネマの音声に特化したシステムということですね。具体的にはどのような仕組みなのですか?

伊藤:映画制作では、ダビング完成前のSTEM(ステム)mixの段階で音楽・SE・台詞のトラックにFORS CINEMAプロセッサーを通してもらいました。プロセッサーのコア回路はFORS MASTER PROCESSで使用しているものと同じですが、新回路と新開発の超高速FORSトランスとの組合せにより3パターンをスイッチで切り替え、作品に応じてより効果的なものを選択できる仕様にしました。映画は単純に音をクリアにすればいいというわけではないので、作風にあった音色を組み合わせて選択するということが重要な要素のひとつです。オリジナル原音を忠実に伝送することに加え、作品にあった音色効果も出すことが可能です。

今後は、どのような展開を考えていますか?

伊藤:FORS CINEMAとしてのベースが整ってきましたので、今後はいろいろなジャンルの映画での実績を積んでいきたいと思っています。ただ、デジタルシネマの世界では、シネマサーバーを介してインジェストする仕組みですので、劇場の個々の環境によっては音がさらに変化する要因など、コンテンツの音質を良くする以外の問題を抱えてていることも事実です。その辺りは今後の課題として取り組んでいきます。

●伊藤 幸一
メーカーにてDVD等光ディスクの立ち上げに従事。
2005年キュー・テックへ入社。現在、技術部に在籍。